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装置を接続して発生する気体量を液面に鉛直に倒立させた直径100mm、高さ1mのメスシリンダで集気する。時間経過に対する集気した量を測定して気体発生量を求めるまた、集気した一定の気体量を倒立させたメスシリンダ内に閉じ込めておいて時間経過に対する液体への気体の溶け込み量を測定する。なお、これらの測定に際しては気体にかかる圧力を一定に保つためにメスシリンダ内の液面が周囲の液面と同じになるようにメスシリンダの高さを調節する。使用した液体は1〜20%の重量濃度で市販の塩を溶かした塩水(以下簡単のため、これらの塩水の内3%の重量濃度の塩水を人工海水と呼ぶことにする。)と人工海水に100ppmの濃度で高分子添加剤PE018(poly-ethylene oxide)を添加した塩水である。
次に、揚水特性を訓べるために製作した電解発生気泡ポンプの実験装置を模式的にFig.1-(C)に示す。本実験では最も構造が簡単なステンレス鋼板1枚、炭素板1枚の平行電極を用いる。前述した各種液体を満たした内径9mm、高さ3300mmの透明アクリル樹脂製の揚水管内に設置した電極?に最大電流40Aの直流電源?を並列に接続し、通電し各種液体を電気分解するこれらの液体を電気分解すると水素を主とする気体が気泡状態で発生し、周囲の液体とともに揚水管内を上昇していく。上昇した気液二相流を上方に設けた気液分離箱?で気体と液体に分離し、液体のみを量水タンクに流し込んで流量を測定し、揚水量を求めるなお、揚水管内の液面の高さはオーバーフロ一タンク?の高さを変えて調節するところで、揚水管に注入する気体量が増していくと、気液二相流がスラグ流、フロス流、環状流へと還移していくことはよく知られている8)。このことは、深海から管内を気泡が上昇していく場合を想定した時には、気泡の上昇に伴って海面からの深さが変化し周囲の圧力が変化していくために気泡体積も変化し、その結果上昇する気液二相流の流動様式が還移していくことに対応していると考えることができる。そこで、気体量が増した場合の実験はFig.1-(b)に示す環状型と単一ノズル型の気体注入部にコンプレッサーから空気を圧入して行う。ボイド率の測定に際しては、揚水管?の上下に設置したボールバルブ?を上下同時に急閉して揚水管内の液体の高さを測定して平均ボイド率を求めるまた、揚水管?には300mm間隔に0.8mmの静圧孔を設けマノメータに導いて静圧差を測定し、PEO添加が人工海水に対する気泡流、スラグ流、フロス流、環状流の各種流動様式での気液二相流の管摩擦損失に及ぼす影響を検討する
4. 結果と考察
4−1. 電解発生気泡ポンプに使用できる気体量
1〜20%の重量濃度で市販の塩を溶かした塩水と人工海水に100ppmの濃度で高分子添加剤PEO18を添加した水溶液を電気分解して発生する気体量をFig.2に示す。気体発生量QG(ml)はいずれの場合にも電流量K(c)のみに依存し、ファラデーの法則に従って、QGはKに比例して増加しているしかし、これらの塩水の電気分解は塩分濃度や電極の材質などにも依存しており、必ずしも簡単な問題とは言えず未だ不明な部分も少なくないようである。一般にはこれらの塩水に存在する化学物質はNa+とCl−の両イオンとH2Oで、陽極(炭素板)での建化反応は
2Cl− → Cl2↑ + 2e−
2H2O → O2↑ + 4H + 4e−
C + 2H2O → CO2↑ + 4H+ + 4e−
で記述され、陰極(ステンレス鋼板)での還元反応は
2H2O+2e− → H2↑ + 20H−
で記述されると考えて良さそうである9)。これらの4種類の反応が全て生じる場合には気体発生量はファラデーの法則に基づいて
QG = 0.189K(ml) (1)
と見積もられるしかし、人工海水を電気分解して実際に得られた結果はFig.2に示すように
QG = 0.144K(ml) (2)
で近似された。また、PEO18を100ppmの濃度で添加したことによる気体発生量への変化はなく、人工海水と同様に式(2)で近似された。式(1)と式(2)との差は発生した水素、塩素、二酸化炭素と酸素の内で二酸化炭素と塩素の一部が約1mの長さのメスシリンダ内を浮上していく間に塩水に溶けてしまったためと考えられるしかし、気泡ポンプヘの利用を考える場合には更に時間が経過した場合に不溶性の気体がどれだけ残るかを知る必要があるのでメスシリンダ内に集気された気体の内で塩水に溶けない気体量を測定した結果をFig.3に示す。塩水に溶け込んだ気体量は、200時間経過後でも初めに集気された気体量の10%以下であり、実際の数計分種皮の短時間の使用に際しては式(2)で記述される水素を主体とする気体を電解発生気泡ポンプに使用して良いことが結論されるなお、参考のため、気体発生量に及ぼす塩水濃度の影響をFig.4に示しておく。塩水濃度が高くなると塩分濃度が約10%程度で気体発生量は一定値に落ちつき、それ以上濃度を増していっても気体発生量は変わらなくなる。

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Fig.2 Volume rate of elecrolytically-generated gas-bubbles

 

 

 

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